導入・活用TIPS
  • 2024.02.02 Fri

宇宙で活躍する「家電製品」

この記事をシェアする

宇宙利用サービス導入のポイントを、その道のエキスパートが解説する「導入・活用TIPS」。今回は「宇宙で活躍する家電製品」をテーマに掘り下げます。

● 執筆者からのひとこと
私たちの身近にある家電製品。実は、宇宙ステーションの中で使われている家電があるのです。一例をご紹介しましょう。

目次

● 執筆者
友部 俊之(ともべ としゆき)
有人宇宙システム株式会社(JAMSS) ISS利用運用部 所属

● プロフィール
宇宙実験(特に材料系実験)を実現するための装置開発に長年従事してきました。近年は宇宙における生活の質(QOL: Quality of Life)の向上に注目しています。

掃除機があります

上の写真は、皆さんお馴染みのハンディ掃除機です。手に持って使う小型の掃除機ですね。国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)の「きぼう」日本実験棟には、マウスを飼育できる飼育ケージがあります。その飼育ケージを清潔に保つために、複数の掃除機が使われています。

上の写真の掃除機は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA: Japan Aerospace Exploration Agency)様より開発を請け負った我が社(JAMSS: Japan Manned Space Systems Corporation)が、家電メーカのパナソニック様にお願いして、市販のハンディ掃除機をベースとした宇宙用製品を開発しました。

この掃除機は以下のような特長を持ち、宇宙での使用に適した製品になっています。
・ 小型軽量であること
・ 吸引力が大きいこと
・ ゴミが逆流しないこと

こんな工夫をしています

掃除機本体の外観は市販品と同じですし、(外からは見えない)心臓部分のモータも市販品と同じなのですが、宇宙へ持って行くために様々な工夫をしています。

●電池の変更
市販品は充電池を使っていますが、安全性の観点で、乾電池を使う方式に変更しました。
写真中の白い直方体は電池パックで、中に乾電池がたくさん入っています。

●ノイズ対策部品の追加
掃除機から発生するノイズによって、「きぼう」日本実験棟の他の機器が誤動作したら大変です。これを防ぐ目的でノイズ対策部品を追加しています。

●ゴミ収集方法
市販品は布フィルタの中にゴミが溜まり、ゴミがいっぱいになったら布フィルタを取り外してゴミをゴミ箱に捨てる方式ですが、宇宙ではゴミが浮いてしまい、ゴミ箱にうまく捨てられないでしょう。このため、蓋(逆止弁)付き紙パックの中にゴミを溜める方式にしました。

試験があります

製品が完成したらすぐ宇宙に持って行ける訳ではありません。宇宙に行く前にいろいろな試験に合格しなければなりません。どのような試験をするのでしょうか?

●機能/性能試験
あらかじめ決められた機能と性能が発揮できることを確認します。掃除機ですとゴミがきちんと吸えることの確認、吸えるゴミの量が充分であることの確認、などです。これは宇宙に限らず、製品を開発したら実施する試験ですね。

●騒音試験
掃除機を動かしたときに発生する騒音が、許される範囲内であることを確認します。

●振動試験
掃除機はロケットで宇宙に行くことになりますが、ロケット打上げ時の振動で、掃除機が壊れないことを確認します。

●EMC試験
EMC(Electro Magnetic Compatibility)って、馴染みが無い用語かもしれません。掃除機から発生する電磁波によって、「きぼう」日本実験棟にある機器が誤動作したりしないか調べます。

●温度試験
宇宙飛行士が触ったときに火傷することが無いように、製品表面の温度範囲が決められています。

あなたの「家電」もいかがですか?

限られた宇宙飛行士だけではなく、一般の人も宇宙に行ける時代が近づいてきました。快適な宇宙生活を支えるためにあったら便利な家電製品って、いろいろありそうですね。自分自身が宇宙に行くことは難しくても、自分が関わる家電が宇宙に行くことは、夢ではないかもしれません。

もし、「この家電が宇宙で活躍できたら」なんてお考えのあなた、ぜひ我が社(JAMSS)にお声がけください。宇宙のプロの我が社がお手伝い致しましょう。

Source:
パナソニックのハンディ掃除機が宇宙へ JAMSSと協力してISS 日本実験棟「きぼう」の実験をサポート
トピックス/2019年12月24日

※開発にご協力頂きましたパナソニックの皆様(*)に感謝申し上げます。
 *旧 パナソニック株式会社 アプライアンス社
  澤田様、北口様、羽田野様、別府様

この記事をシェアする

next